本稿では格闘技の世界(キックボクシングとMMA)で大流行しているカーフキックという技を紹介する。 また、カーフキックの特徴から流行の背景を探り、現在の格闘技会の全体像を考察する。
対象読者
- 今はまだ格闘技に興味はないけれど、これから格闘技に興味を持つかもしれない人
- 大流行しているカーフキックについて一緒に考察してくれる人
モチベーション
現在、格闘技(本稿ではこれ以降 格闘技
という単語はキックボクシング及びMMAのことを差す)の世界ではカーフキックという技が大流行している。
知らない人のためにカーフキックが使われた印象的な試合を紹介する。
※ 上記の試合は堀口恭司選手が一度敗北し大怪我を負わされた朝倉海選手に復帰からのダイレクトリマッチするという文脈的にも非常に魅力のあるカードなので、未見の方は是非チェックしてほしい。
ONE Championship で活躍する青木真也選手も自身のnoteでカーフキックの流行について言及しており、このトレンドは暫く続くと筆者は考えている。
本稿ではカーフキックの流行から、現在の格闘技界における全体的なトレンドを考察する。
免責事項
- 筆者は格闘技未経験
- 時間があるときに動画を見ている程度の1ファン
- 誤りなどあればご指摘をお願いしたい
カーフキックとは
カーフキックとはローキックの一種である。
一般的なローキックは太ももを蹴るが、カーフキックはふくらはぎの横を蹴る。 ふくらはぎの横の筋肉はとても薄いため蹴られるとめちゃくちゃ痛い。最悪骨折することもあるらしい。
空手の世界では下下段蹴りなどと呼ばれ、昔からある技であり、武道の世界から格闘技の世界へ持ち込まれて現在流行している。
筆者は格闘技未経験なのでカーフキックを蹴られたことは無いのだが、 ふくらはぎの横を指でマッサージしただけでも結構痛いので蹴られたときのダメージはかなりのものであることが想像できる。
先程紹介した朝倉海 vs. 堀口恭司の試合でも2,3発目くらいから足の踏ん張りが効かなくなっているように見える。 4:30秒あたりで朝倉海選手のふくらはぎが画面に映り込むところを確認すると、赤黒く腫れているのが確認できる。
カーフキックには受け方がある
上述の通り非常に協力なカーフキックだが受け方も勿論存在する。
やり方としては、スネを相手の蹴り足に向けてガードするだけである。
カーフキックは上述の通り相手の足を簡単に破壊できる協力な技である一方で、ガードされると蹴った方の足が痛いためリスクがある技でもある。
この話だけを聞いて真に受けると、カーフキックが流行しているのは不思議に感じるだろう。
カーフキックをガード(し|でき)ない理由
ここからはカーフキック流行の背景から格闘技会の全体像に対する筆者の考察を紹介する。
今の格闘技はパンチが主体
SNSの普及で、格闘技でもハイライトシーンが切り取られた動画が放流されることが増えた。 SNS上ではあまり格闘技に詳しくない層にも伝わりやすい、派手なKOシーンのウケがよい。得に、早いラウンドでのKOはバズりやすい。
パンチによる攻撃(ストレートやフック)は早いラウンドでKOを狙うことが出来る。 逆に、主な蹴り技(ローキック、ミドルキック)は試合の後半に効いてくる遅効性なので、 インパクトのあるKOシーンを作りたい選手は必然的にパンチ主体のファイトスタイルになる。
強いパンチを打つために、選手はスタンスを広く、深く構える(つま先が内側を向くイメージ)ことになるが 広く、深い構えはスネが相手の蹴り足と反対を向くため、カーフキックをガードしにくくなってしまう(これはローキックを貰ってでも倒すというメンタルモデルであるとも言える)。
早いラウンドでKOしたいがためにスタンスを広く、深くとる選手が増えた結果、カーフキックが流行することになったのではないだろうか。
下記の動画では和田竜光選手が打撃を得意とする選手相手にカーフキックを効かせて勝利している。
まとめ
- 現在の格闘技界ではカーフキックが流行している
- 流行の背景として、中距離から強いパンチを狙うために広く深いスタンスをとる選手が増えたことが考えられる
- 選手がどのようなスタンスと距離感で戦っているのか、その背後にある意図を考えることで格闘技の試合は何倍も楽しむことができる
余談
本稿ではかなりざっくりとした考察を伸べたが、実際の格闘技は複雑で奥深いものである。
マクロな視点で考えすぎると細部を見逃してしまうため、上記の内容に該当しない活躍中の選手も一部紹介しておく。
K-1 ウェルター級王者 野杁 正明選手
野杁 正明 vs ジャバル・アスケロフ
野杁選手のファイトスタイルは唯一無二なので、詳しい紹介は別の機会に譲る。
ONE フェザー級キックボクシング元王者 スーパーボン選手
スーパーボン・シンハ・マウイン vs ジョルジオ・ペトロシアン
伝説と言っても過言ではない存在同士のカードなので、未見の方は是非フルファイトをチェックしてみてほしい。